もう何年も前の話です。
当時200名の従業員を抱える、とある企業の社長が困惑していました。
オーナー社長が会長に退き、自分が社長に任命されたものの、
1年経っても、「全く任されている気がしない」というのです。
理由を伺ってみると、社長は重い口を開き始めました
「うちの会長は社内の状況をすべて把握しているんです。
会長室には、TVモニターが8台も並んでいて、そのうち6台には、
職場における従業員の働きぶりが映っています。
残りの2台は、リアルタイムであがってくる業績関連のグラフ。
計8枚のモニターが、彼の椅子を取り囲んでいます。
また、会長は、お客さんとの会食はなるべく少なくし、
週の多くを、若手メンバーとの懇親会にあてている。
秘書が隙間なくスケジュールを組んでいるんです。
そうすると、当然若手からは仕事の悩みや、
プロジェクトをやっている中での不満などが出てきますよね。
トラブルの話や、品質が低下している話、
上司たちのマネジメントの話なども出てくる。
そこで、会長はいろいろと相談に乗るので、若手に大人気なんです。
もともと、みんな会長にあこがれて入社してきているので、こうした時間は、
若手社員にとっても大変モチベーションの高まる時間になっています。
でも、中抜きされた僕も含めたすべての管理職は、正直困っているんです。
なにしろ、課長、部長のみならず、会社の誰よりも、
会長が若手のことを知っているんですから。
そして会長は、若手から情報を得た翌日の早朝、
関連する管理職を呼びつけて、解決案を指示します。
『あーだ、こーだ』と。
呼び出された方は戦々恐々ですよね。
何を言われるか、おっかなびっくりですよ。
『君、こういうことは知っているかね?』
『いや、それに関しては……』
『君はそんなことも知らんのかね。現場では、こう言っとるぞ!
自分の部下のことを、君は、何も知らんのだなぁ!!』
毎日がこんな状況なんですよ…」
*********
この企業において株が上がっているのは「会長本人」だけで、
メンバーの直属の管理職や幹部はもちろん、新任社長の株までもが、
落ちていく一方です。
それはそうでしょう。
役職を与えられながらも、
会長からは「君を信じているよ」というメッセージが
微塵も感じられないのですから。
そして、会長自らが、社長や幹部を選んだにも関わらず、
その会長自らが、社長や幹部の人望が失うように仕組んでいる。
自分がヒーローであるための自作自演のドラマのようです。
創業以来、すべてを自分で切り開いてきた会長ですから、
気になることが山ほどあるのはわかります。
しかし、もし任せると決めたのならば、「信じて、待つ」こと。
そして、「いつまでも自分がヒーローでありつづけたい!」という気持ちを脇に置くこと。
さらには、「自分以外の人の活躍を素直に喜べるこころをもつ」こと。
**********
それから数年して、この企業の方から、あるお知らせをいただきました。
それは、「社長辞任」の連絡でした。
しかも、前述の社長ではなく、その次の社長、つまり2人目の辞任です。
そして、それからまた数年。今度は、新聞で知りました。
その会社が倒産したことを。
やはり、そうなったか…。
正直、あまりおどろきはありませんでした。
リーダーの器の大きさ以上に、組織は大きくはならない…。
現在、あまりにもこのストーリーにのってしまっている会社が多いことをいつも残念に思います。
きっと価値ある存在だからこそこの世に産まれ、生き残ってきた企業なのでしょうから、
そのトップの成長がとまった瞬間に生き途絶えてしまわせるのは、実にもったいない!
成長し続けていきましょうね!
そうでないなら、退かないと!!
そう思いませんか?
今日もきっと・・・I・W・D!